パブリックリレーションズは「思いやりの道」
渋沢栄一は、人間関係の問題解決に「思いやりの道」をさとしています。
商業における「思いやりの道」は、パブリックリレーションズの哲学そのものです。
パブリックリレーションズは、高い倫理観を持ち良好な人間関係を築く。
人間関係を企業の経営資源として活用していく活動です。
現代の状況に照らし合わせ、渋沢栄一の「論語と算盤」を要約します。
「論語と算盤」実用要約
思いやりの道
社会、労働、家庭問題は「思いやりの道」で解決する。
家庭問題
- 権利と義務を主張して裁判になれば、気持ちは険悪。
- 人と人の間に壁が築かれ、ことごとく争いになる。
- 一家が仲良くまとまらない。
- 両者に壁ができる。
富める者と貧しい者の貧富の差
- 個人の豊かさは国家の豊かさ。
- 個人の豊かになりたいという欲望が国家を豊かにする。
- 貧富の差は成り行き。
- 貧富の差はいついかなる時代にも存在した。
- 人には、賢さ、能力、努力の差がある。
- 誰もが一律に豊かになるのは無理。
- 富の分配は空想。
実例
ソビエト連邦の失敗
労働者と農民による格差のない平和な国。
社会主義国家を目指す。
- 努力しても怠けても同じ給料。
- 生産性を上げる努力も無駄。
- 国有企業が利益を追求しない。
- 生活者がほしいものと政府が計画的に作る製品が合致しない。
- 独裁者が権力を握る。
生活は貧しくなり、体制が崩壊
NHKニュース1991年 ソビエト連邦崩壊
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030239_00000
さらに詳しく
池上彰の現代史講義 第03回 「ソ連の誕生と崩壊」
楽しみながら学ぶなら
映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』
中国文化大革命の悲劇
池上彰の現代史講義 第10回 「中国・大躍進政策と文化大革命」
山形国際ドキュメンタリー映画祭 2019大賞ロバート&フランシス・フラハティ賞、観客賞受賞、カンヌ国際映画祭特別招待作品
貧富の差は、人間社会の宿命とあきらめる。
とは言うものの放置してはいけない。
自然に流されれば、取り返しのつかない事態なる。
禍が小さいうちに「思いやりの道」で防ぐ。
実例
リーマンショック
2007年から2008年。
マネーゲームが金融危機を引き起こす。
株価暴落、不良在庫の発生、新規事業の打ち切り派遣切り、ホームレスの増加。
日本でも外国人労働者が真っ先に解雇になった。
今日明日も繰り返される道徳のない商取引が描かれます。
リーマンショックを描いた映画「マネー・ショート」
フランス革命
王侯貴族たちの贅沢な暮らし。
産業革命がおこり、労働者が資本家に搾取される。
貧困生活に耐えられなくなり革命が起きる。
- 1830年 フランス7月革命 市民階級のブルジョワである資本家の革命
- 1848年 フランス2月革命 労働者が立ち上がった革命
- 1848年 ドイツ3月革命 ヨーロッパ各地に革命が広がる
映画「レ・ミゼラブル」(題名の直訳「悲惨な人々」)
ゴールデングローブ賞,アカデミー賞受賞
ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」
カンヌ国際映画祭審査員賞、セザール賞受賞
映画「レ・ミゼラブル」
「経営者と労働者の理想の関係」
ドイツの製鉄会社クルップ社のコロニー
製鉄会社クリップ社は、工場のそばに労働者の集合住宅を建設します。
売店やビアホールも併設。
職工が昼休みに自分の家に帰ることもできました。
渋沢栄一の談話
- 工場が仁政を行う。
- 単純な主従の関係でなく、温き情愛を以て親切に職工を待遇する。
- 直接労働に従事する人のみでなく、その老人、少年をも慰安する。
- 死傷者には厚く酬う。
- 時には多数を集めて愉快なる遊戯を催す。
- クラブを設置して団欒の楽みの機会を与える。
竜門雑誌「労働問題解決の一端」より
アメリカボストンのウオルサム時計
ウオルサム時計会社の如き、其の組織が極めて家族的であつて、両者の間に和気あいあいたるを見て、頗る歎称を禁じ得なかつた
渋沢栄一著「青淵百話」より
大量生産ができて精工なウオルサムの時計は、アメリカ大統領リンカーンにも愛用されました。
1860年、日米修好通商条約の遣米使節団にウオルサムの懐中時計が贈られています。
渋沢栄一記念館には、渋沢栄一が映ったウオルサムでの記念写真と懐中時計プレミア・マキシマスが展示されています。
「道徳という道を歩む」行いが円熟するなら、法の制定も無意味に。
労働問題も起こりません。
競争と勉強は進歩の母
- 何かを一生懸命にやるには競争が必要。
- 競うから励みも生まれる。
- 競争には2種類ある
善い競争
- 人より早く起き
- 工夫して
- 知恵と勉強で他人に打ち克つ
悪い競争
- 他人の真似をして
- かすめ取り
- 横から成果を奪い取る
状況によっては、悪の競争でも利益が転がり込む。
多くの場合は、損をする。
そして、損失は、「日本の商人は困ったものだ」と国家にも及ぶ。
事例
クラウドファンディング
本来は、銀行などの金融機関がやるべき事業をITシステムが奪っています。
例えばクラウドファンディング。
インターネットを利用して、銀行業務をすっ飛ばし、資本家たちの資金や資本家でもない人たちの投資資金を集金してしまいました。
事業や企業を育て、地域経済や地域のインフラを整備する。
国を豊かにするのが銀行の仕事です。
渋沢栄一は、欧米に肩を並べる国にしようと民間の国立銀行を創業しました。
銀行が全くやっていないとは言いいません。
全国のあちこちで再開発への投資がされています。
担当者レベルでは、そうした情熱を持ったバンカーも存在します。
とは言うものの、「クラウドファンディング」というアイディアは、広く細かく資金を集め企業を興す渋沢栄一の銀行業そのものです。
横並びで似たり寄ったりの商売をしている銀行は、悪い競争の典型になりかねません。
金融業も飲食業と同じく、お客様との「共通価値の創造」リレーションシップバンキングを実現する段階に入っています。
同時にクラウドファンでイングは、「善い競争」の典型。
Crowd Fundingは群衆から、資金調達するソーシャルファンディング。
国内最大のクラウドファンディングCAMPFIRE
- 2021年4月
- プロジェクト数 49,000件
- 出資者 約480万人
- 累計流通額 約410億円以上
飲食店における「思いやりの道」
お客様とお店の問題
思いやりのない店員
- 味は二の次で1円でも安い品物を仕入れる
- 売れ残りを処分するためおすすめする
- 食材を吟味しない
- トレーサビリティーに無関心
- お客様の将来にわたる健康に無関心
- 環境問題に無関心
思いやりのないお客様
- 「飲み放題」「食べ放題」の飲み残し食べ残し
- 王様のように頻繁に係を呼びつける
- 予約を無断でキャンセルする
- 価格に見合わない過剰なお願いをする
- 相手の予定や都合に関係なくお願いをする
- 営業時間外に来店する
これらお互いの行為が長年にわたり積み重なってきました。
お客様と飲食業スタッフの関係が機械的、機能的に関係に。
「おもいやりのない道」です。
日本のサービス業の労働生産性は下位
まとめて、注文をしないグループが増えています、
私の感覚では、みんなの注文をきいてまとめてくれるグループは、2~3割くらいです。
バラバラに思い思いに思いつくまま注文します。
餃子を1皿頼み、その5分後に同じ餃子を注文するイメージ。
作る人への気配りがありません。
ビールを1杯頼んで、その15秒後に同じグループの別の人がまた、ビールを1杯頼む。
サービス担当のセオリーでは「他にお飲み物はよろしいですか?」と皆さんに声をかけ、できるだけ注文をまとめます。
それでも、1分も経たないうちに同じビールをオーダーしてきます。
金を払ってるんだから、いいじゃないかと言ってしまえばそれまでです。
確かにその通りで、従業員は不平も言わずにもくもくと立ち働きます。
昭和の時代には、元気のよいご注文が入り乱れる場合、チップを置いていくお客様がいらっしゃいました。
「いろいろわがままをきいてくれてありがとう」という気持ちがこもっていました。
ところがいつのまにか、店自体が席料やサービス料をあらかじめ設定しました。
サービス料は、直接、従業員に入って来ません。
給料の一部にはなってはいますが。
欧米では、チップがサービスパーソンの重要な収入源になります。
ハリウッドのバーで働いているあるバーテンダーは、「月給は18万だけれど、チップは日本円で50万円」は稼いでいました。
鴨頭嘉人の「チップ文化」の挑戦
『チップには「感謝」であったり、「応援する気持ち」があります。
人々の想いがこもったエコシステムなのです。』
※導入店舗は、サイト掲載費・監理費で月額500円が必要。
一般社団法人日本チップ普及協会HPよりhttps://tip.official.ec/
「チップ文化」導入普及協会の課題
- 月額経費を支出するのは会社なので「チップ」を店や会社が回収してしまう。
- 従業員で均等分配してしまい特定のスタッフに直接届かない。
- チップシステムが定着した後に協会がどのように舵取りをするか見えない。
- 「チップ」は特定の個人に渡すお礼、お礼をシステムで渡すのが不自然に感じる人も。
解決策
お客様との関係をより、深めるために「チップ文化」を導入することは有効です。
チップは欧米ではお客様のマナーです。
テーブルを担当した従業員もお客様の好みを熟知し、お見送りまでがっちりお客様をフォローします。
既製品のシステムを導入する前にまず、店独自でチップ文化の導入計画を立てます。
その上で、日本チップ普及協会のシステムを「導入販促として活用」します。
順番が逆になると手段と目的が逆転します。
お客様の好みまで推し量り、予算を頭に入れながら、お客様と一緒にその日の食卓テーブルを盛り上げようという欧米流の発想に至りません。
チップをいただけないお客様への不満だけが育ちます。
単に客単価を上げるためのシステム導入だと、従業員のモチベーションは下がります。
チップを稼ぐ担当者は、奇跡の時間を演出するクリエイター。
仕事の質を大変だけれどやりがいのある仕事に高めます。
コロナで困ってるからチップで応援していただこうというお金ではありません。
また、チップは、金銭ばかりではありません。
お客様からお店のスタッフへのお土産や絵葉書でも嬉しい。
お客様の喜びの気持ちが「チップ」になります。
これまでもチップのような心付けは、発生してきました。
お金や差入れを置いていく粋なお客様を増やすことが着地点です。