「論語と算盤」を飲食店の経営に応用します
立志と学問の章
渋沢栄一「論語と算盤より」
経験 士農工商の身分制度のもと、世の中から人間以下の扱いを受ける
立志 17才で武士を志す
理由 同じ人間に生まれたからには何が何でも武士になる
武士になって政治体制を動かす国政に参加したい
修正 才能に不相応な身のほど知らずと悟る
青年時代の見当違いなやる気が無駄な時間を使った
再び立志 実業界の人になろうと決心する
渋沢は、青年期にたてた「武士になる」という志は、血気盛んな時機で
無駄な時間だったと自虐します。
しかし、武士としての精神修養は、初めての海外留学にも動じない
国政で与党派閥にもひるまず正論をぶつける
争いを避けない強い意志を作ることにつながっています。
免許皆伝の剣術の腕前はまさに文武両道武士の鏡です。
20年以上前、商業界が主催する飲食店経営のマネージメント講座で学ぶ機会がありました。
講師は、日本マクドナルド出身の王先生や日本で最初のファミリーレストラン設立に携わった方など、外食産業の草分け的な方たちでした。
計数管理は清水均先生です。
同じ受講生にびっくりドンキーのオーナーの息子さんがいらっしゃっていたのを覚えています。
序章は、飲食業の社会的な評価でした。
大まかな内容は、昭和の初期、多くの刑事事件の犯罪者に「飲食店店員」という言葉が出てきたと。
これまでの飲食店の社会的な立場を象徴する例として上げられていました。
(当時)35兆円ほどの市場規模の飲食業は、個人店が多く、企業としての運営がされていない。
これからの飲食店はパパママ店であっても地域社会になくてはならない店になることと健全な経営を運営するために計数管理の知識とコントロールの技術が必要だという話でした。
そして、社会的な信用を自ら築いていこうという。
今でも「店員」と見下すお客様が現場感覚では1割ほどいらっしゃるかと感じているのではないでしょうか。
三谷幸喜脚本のドラマ「王様のレストラン」そうした、飲食店スタッフを見下す様子がファーストシーンで展開します。
フレンチレストランのサービス担当、松本幸四郎がかっこよかった。
「お客様は王様です、ただ王様の中にはギロチンで首を切られた王様もいらっしゃいます」
王様のレストランから30年経とうとしています。
飲食店の業種業態の幅も広がり、多くのお客様が海外のサービスや料理の質を体験し
生活の変化とともにお客さまの飲食店へ求める価値も変化しました。
自分たちのお店の社会的な価値は?
客観的に冷静に評価する必要があります。
「論語と算盤」で渋沢は、江戸時代は武士と違って、商業を営む者に道徳や科学的な教育は必要がなかったと嘆きます。
そうして、商業の専門学校、現在の「一橋大学」を設立します。
さて、今、飲食店は、どうか?
原価と人件費だけ見ている店もあります。
適正な広告宣伝費、水光熱費、人時売上高などを日々見て、その数字から何を推測して、明日からの運営を具体的にどのように修正するのか?
0.1%の上下をコントロールしている飲食店は、上場企業か上場と同等の規模の飲食チェーンには、システムとして導入されているもののフォーマットが無かったり、あっても生かせていない店もあります。
計数管理ばかり正確で、正確にマニュアル通りの料理で時間通りにきっちりお客様を帰す工業製品のようなお店もあります。
例えば、一皿3個でワンセットの唐揚げがあったとします。
4人いるから4個にしてという融通が利かない店です。
レジのシステムやスタンバイが3個1セットで梱包されているなど早く安く提供するためには様々な制約があります。
そもそも、誰もがわかりそうな想定外は想定外ではありません。
想定内を想像力不足で想定していない自店の怠慢さが課題なのに、お客様が無理を言っている、わがままな客だと心の中で逆ギレしている場合もあるでしょう。
不幸なことに働いているスタッフが自分たちが工業製品の一部になってしまったことに気づいていない。
逆に愛情ばかり深すぎて、儲けを考えないスタッフもいます。
儲けるところで儲けるバランス感覚があればいいのですが往々にしてサービスしまくるスタッフは全体の計数に疎い。
赤字になれば、社長がどこかからか資金を調達するか、店を閉めるしかないのです。
応援している金融機関や取引先、地域のお客様にも結果として不義理になります。
経営計数もお客様の要望にも柔軟に対応してくれるのだけれど一向に時給や年収を上げてくれない店もあります。
繁盛して儲かっているようなんだけど、結婚もしたいし、ここが潮時かなと仕事を覚えた段階でスタッフが辞めていきます。
何年たっても昔と変わらないね、とお客様は10年ぶりに来たと言って喜んでくれます。
大将も老けたね、昔いたさくらちゃんどうしてる?結婚した?
フーテンの寅さんがいた古き良き昭和の飲食店です。
志のある大将は、丁稚奉公から一本立ちできるようになった職人にのれん分けをします。
時には、保証人になって、あいつの店にも行ってやって下さいとお客様まで紹介たり。
古き良き昭和の飲食店が無くなっていくのはとても悲しいことです。
店先で猫が昼寝してるようなおでん屋さんとかです。
日本の大きな損失だと思っています。
バランスの悪い飲食店のパタンをあげてみました。
では、理想の飲食店を「論語と算盤」から読み解きます。
常識と習慣の章
飲食店の「常識」とは
『人の心「智情意」がバランス良く均等に成長したものが完全な常識』
ここでは、「意情智」と優先順位を変えます。
意 意志
情 愛情
智 知恵
意志の目的
精神活動の大本
感情をコントロールする
弊害
頑固者や強情者になる
根拠のない自信
間違っていても直さない
我を押し通す
飲食店ができること
志を立てる ミッション存在意義
明確なビジョン
ビジョンを実現する具体的な行動原則
『意志ばかり強い突き進むことしか知らない「猪武者」は社会では役に立たない』
情の目的
バランスを保ち円満な解決を与える
弊害
喜怒哀楽愛憎欲に流されてしまうことがある
三つの愛情を豊かにする
自分と自分の家族
従業員
取引先などのステークホルダー
智の目的
物事を見分ける力
原因と結果
善悪
プラス面とマイナス面
弊害
自分が良ければそれで良い
他人の痛みを理解できない
自分の利益のためには他人を蹴とばす人間になる
適正数値に基づいた計数を管理
地域の競合店分析
将来地域に進出する可能性のある店舗の分析
飲食マーケットの状況
他業界の状況
IT環境の変化と社会生活の変化
習慣が人を作る 具体的な習慣案
意志 ビジョンと行動原則の暗唱
愛情 全スタッフに誕生日のカードを贈る
智恵 個別の課題ごとに研究会を発足
3つをバランスよく配合して大きく成長させる
強い意志
聡明な知恵
情愛で調整
極端に走らない
頑固にならない
善悪を見分ける
プラス面とマイナス面を分析できる
言葉や行動がすべて中庸に叶う